新しいの
〜2008-8-1
▼とりあえず1月に収納した分に新しいのを追加。



伝説の男
〜『ジャケット』『封筒』『法則』


なんでオレがいつもツいてるのかって? そうだな、今日は大勝ちして気分も良いし、教えてやってもイイ。 オレの幸運には法則があるんだ。 土曜日で満月の晩に、オレはいつも、玄関脇の検針ボックスにヘリンボーン柄のツィードジャケットを掛けとくんだ。 そしたら明くる日の朝には内ポケットに必ず茶封筒が入ってる。 そいつを開けると、中には数字の書かれた紙が入ってて、オレはその日一番のレースをその組み合わせで買うんだ。 今までその数字は一度も外れたことがなくって、お蔭でオレの懐はいつもあったかいって寸法なのさ。 ウソだろって? ははは、別に信じようが信じまいがおまえの勝手さ。 誰が入れてるのか? そんなこと詮索してせっかくの幸運が去ってったらどうするよ。 金の卵を生むガチョウの腹をわざわざ開いてみるバカはいないだろ。 金の卵を産んでくれりゃそれで充分じゃねえか。 信じろなんてオレァ一言もいってねえよ。好きなように思ってりゃ良い。 ンじゃな。 言っとくが、オレのウチまでついて来て確かめようなんてバカなこたァくれぐれも考えんじゃねえぞ。 忠告したからな。







100回死にかけた男
〜『ガソリン』『味噌汁』『黒幕』


嬢ちゃん、せっかく奢ってくれたのに申し訳ないんだが、オレには近づかない方がイイ。

なぜって、オレは100回死にかけた男なのさ。
一度目は寝てるところを包丁でグサリとやられかけた。
二度目は通りかかったマンションの上からピアノが降ってきやがった。
三度目は小包の中に爆発物が仕掛けられてた。
四度目は味噌汁の中に農薬が入ってた。
五度目は玄関にガソリン撒かれて火をつけられた。
キリがねぇから残りは省略するが、そんなこんなでオレは好むと好まざるにかかわらず、ハードボイルドな日々を送ってんのさ。

犯人?
そいつはその都度違うが、黒幕はわかってる。
オレの離婚調停中の女房だ。

いいオンナなんだが、いかんせん気が荒すぎる。美しくてグラマラスだが、気位が高くて死ぬほど嫉妬深い上、金遣いの荒さは天下一品だ。
若い時分は我慢も出来たが、残りの人生を一緒に過ごしたいと思えるほど、安らげるオンナじゃなくてな。
慰謝料はたっぷり払うから別れてくれと切り出した途端、マシンガンで蜂の巣にされかけたぜ。とんでもねえオンナなんだ。

刺激的だって?
アンタも相当なタマだな。
奢ってくれた礼に忠告しとくが、そのカッコいい太腿に隠してるそいつは抜かない方がいいぜ。
あのオンナにいくら貰ったか知らねぇが、そんなハシタ金じゃ割が合いやしねぇぜ。

実はな、オレは不死身のサイボーグなのさ。
何度目かに毒を飲まされて、いよいよお陀仏かって時に、物好きの主治医に改造されたんだ。
証拠代わりにこのゴーグルからレーザービームが出る所を見せてやろうか?

帰って女房に伝えな。
イイカゲンにしねぇと、尻っぺた引っ叩きに行くぞってな。
別嬪の据え膳を頂きもせずに返すのは残念だが、猛毒の棘がついてると知って薔薇を手折るほどオレは酔狂じゃねえんだ。

さ、帰ンな嬢ちゃん。あばよ。








意味なし
〜『アンケート』『ゆとり』『木の葉丼』


木の葉丼に関するアンケート?
そんなもんに答えてるほど、おいらにゃ精神的時間的ゆとりがねえッつの。
第一、木の葉丼なんて食ったことも、店のメニューで見かけたこともねぇし。
わりぃが、他をあたってくんな。




ありがち
〜『巫女』『解放』『命』


悪の秘密結社によって封印から解放された百八つの怨念を 再び封じるために、命を懸けて戦う 美しき若き巫女の物語。








夜明けのスキャット
〜夜明け・歌・孤独


女と出会ったのは夜明けの街だった。

街という表現が本当に相応しいのかは定かではない。
空襲に焼かれた瓦礫だらけの野ッ原なんぞ街ではないと言われれば確かにそのとおりだ。


女は
紫から白に変わってゆく空に
黒い細いシルエットになって佇んでいた。

銭湯の煙突だけがつくねんと残ったその高い上に
まるで暁烏か何かのように止まって、歌を歌っていた。




「おい、女」
「そんなところで何をしている」 俺は尋ねた。
もしかすると邪魅かもしれないなんぞと柄でもないことも考えた。

「お陽さまを祝福していたの」
「あなた、だれ? MP?」 高い細い声が答えた。

「いいや」
「どっちかというとその仇の方だ」

「そう」


女はそれきり口を噤んで煙突を降り。
どういう風の吹き回しか、そのまま俺についてきた。





そのうちに女と俺は懇ろになった。
女も俺も孤独だったのだ。障害は何もなかった。
女が異形の子を産むまでは。








無題
〜反応・詮索・ベルト
秋で食べ物が美味しいからだろうか、少しばかりウェイトが増えてベルト穴をひとつ緩めにするハメになった。
明くる日、ソレをすかさずお局さまに見咎められて、その理由について詮索される。
ここで過剰に反応したら相手の思う壺だ。
「あはは〜、ちょっと太っちゃいまして」
アタマをかきながら笑って見せると「別の理由じゃないの?」と牛乳瓶の底のようなメガネの奥で、爬虫類のソレのような目玉がキロリと動く。
「まさか〜〜〜〜」
もちろん彼氏はいるけど、そんなヘマをするもんか。
男っ気皆無のアンタには縁のない心配でしょうけど…と胸の中で舌を出す。


女の職場も戦場だ。
コイツがいる限りアタシの心に平安はありえない。








オトシモノから始まる恋?
〜ツルハシ・辞典・ハンカチ
ハンカチと言えば淑女のオトシモノの定番だよな。

はらり。
「おっと。お嬢さん、ハンカチが落ちましたよ」
「あらまあ、これはご親切にありがとうございます。そうだわ、お茶でもご一緒にいかがですか」
「礼には及びませんが、美しいお嬢さんのお誘いでは断る訳にも参りませんな。お言葉に甘えるとしましょう」


いやいやいや、ねーだろ、イマドキ。そんな出会い!



ゴス!(←網棚から落下する物体がッ!)
「女ひ大生のお姉さん、じ、辞典が、おち、落ちまひたひょ」
「あらららら。顔面直撃? ゴメンゴメン、ダイジョブ?」
「楽ひひょうに言わないでくらはい」
「わ、鼻血? 取敢えずこの駅で降りようか?」
「はひ・・・」
「ナカナカ止まんないね、鼻血。ウチ近くなんだけど来る?」

いやいやいやいや、ありえねーって!!



ズガン!
「ガテン系のお母さん、ツルハシが落」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。